最近、男性の更年期障害について、ネットやTVやなどでも取り上げられることが増えてきました。以前はうつ病と診断されていたケースや、「更年期障害」は女性特有の症状と考える方も多かったのです。

男性の更年期障害とはどのようなものか、西洋医学の観点から説明します。

男性更年期障害(LOH症候群)の症状

身体の症状、心の症状、性機能の症状があります。

身体の症状:頭痛、めまい、耳鳴り、筋肉痛、ほてり、発汗、疲れやすい、倦怠感、食欲不振、

心の症状:集中力の低下、イライラ、躁鬱、不眠、落ち込み、引きこもり、やる気が出ない

性の症状:性欲減退、ED(勃起機能不全)、頻尿、夜間尿

 

男性更年期の原因

男性ホルモン「テストステロン」の役割は生殖機能、筋肉を作る、気力や活動力、行動力、闘争心などを持たせる働きがありますが、男性ホルモン(テステステロン)の分泌量が低下するとこれらの役割に関する機能の低下や自律神経の乱れが生じます。

男性更年期障害が発症する要因

  • 年齢による老化
  • 肥満
  • 運動不足
  • 睡眠不足
  • ストレス
  • 栄養の偏りまたは不足

男性更年期(LOH症候群)のチェック

  1. 最近性欲が落ちてきた。
  2. 勃起(朝勃ち)をしなくなった。
  3. 筋力が低下してきた。
  4. 背が低くなった。
  5. 趣味や楽しいことに興味がなくなった。
  6. 感情の起伏が激しく、怒ったりし悲観的になる。
  7. やる気が出ない。
  8. 転んだり躓く回数が増えた。
  9. 食後に眠くなったり、だるくなったりする。
  10. 仕事が効率よくできなくなった。

チェックリストに当てはまる項目が多いほどであるLOH症候群の可能性が高く、

  • 最近性欲が落ちてきた。
  • 勃起(朝勃ち)をしなくなった。

の項目に当てはまる方はLOH症候群である可能性が極めて高いですので泌尿器科で受診してください。

気分が落ち込むなどの症状がある場合には次のチェックもしてください。

  1. 一日中気分が落ち込む
  2. 面白いことが何もない
  3. 食欲が減少して体重が減少した。
  4. 夜、寝つきが悪く、夜中に目が覚める。
  5. 動きが緩慢になった
  6. そわそわして落ち着かない
  7. 疲れが抜けない
  8. 生きている意味が分からなくなった
  9. 集中できない、余計なことを考えてしまう
  10. 死にたいとよく考える

このチェックで5つ以上当てはまる項目がある方は、うつ病の可能性がありますので、心療内科での受診をしてください。

西洋医学での治療

テストステロンは主に精巣で作らます。夜間の睡眠中に作られ、日中は減少するため午前中に血中濃度が高くなり、夜に向けて血中濃度は低下しますので午前中の血中濃度を測定します。

男性更年期障害の治療は主に泌尿器科で行われ、血液検査で男性ホルモンの血中濃度を測定します。

テストステロンの検査値

基準値(男性)

血中(遊離型テストステロン):250~1100(ng/ml)

尿中:13~160(μg/日)

※参考文献
「加齢男性性腺機能低下症候群(LOH 症候群)
診療の手引き
日本泌尿器科学会・日本 Menʼs Health 医学会
「LOH 症候群診療ガイドライン」検討ワーキング委員会」より一部抜粋

テストステロン値が基準値よりも低い値である場合、医療機関ではホルモン補充療法が行われます。

アンドロゲン補充療法(ART)の適応

●LOH症状および徴候を有する 40歳以上の男性
かつ,血中遊離型テストステロン値が以下の場合

●8.5pg/ml未満
ARTを第一に行う

●8.5pg/ml以上 11.8pg/ml未満
症状や徴候の程度や,ARTのリスクおよび有用性を説明し,治療選択肢の一つとする

●11.8pg/ml以上
ARTは行わず,症状に応じて以下の治療を考慮する
性機能症状:PDE5阻害薬
精神・心理症状:精神神経科医・心療内科医と相談し,抗うつ薬・抗不安薬を投与する
身体症状:骨粗鬆症に対しては専門家と相談し薬物療法,筋力低下に対しては生活習慣の改善などを指導する

アンドロゲン補充療法(ART)の除外基準

・前立腺がん
・治療前 PSAが 2.0ng/ml以上
ただし、2.0ng/ml以上 4.0ng/ml未満の場合は慎重に検討し治療する
中等度以上の前立腺肥大症
・乳がん
・多血症
・重度の肝機能障害
・重度の腎機能不全
・うっ血性心不全
・重度の高血圧
・夜間睡眠時無呼吸

アンドロゲンは多くの臓器,組織に作用するステロイドホルモンである.ART に際して考慮すべきリスクとして心血管系疾患,脂質代謝異常,多血症,体液貯留,前立腺肥大症,前立腺癌,肝毒性,睡眠時無呼吸症候群,女性化乳房,ざ瘡,精巣萎縮,不妊,行動・気分の変化が挙げられるとされています。

アンドロゲン補充療法と副作用

(1)心血管系疾患
血中遊離型テストステロンが低い場合において冠動脈疾患の罹患率が高いことが報告されている。しかし、長期にわたる ART が心血管系に与える影響は確認されておらず、臨床症状に応じた循環器系検査が必要である。
(2)脂質代謝
治療中の血中テストステロン値が生理的な範囲を超えないアンドロゲン補充療法では脂質代謝に有害な影響を及ぼさないが、高用量では血中 HDL コレステロール低下が観察されることがある。
(3)多血症
ART を行った性腺機能低下症患者の 24% に血栓除去手術または ART の中断を必要とする多血症が認められている。治療に際しては、定期的な血液検査による多血症の監視が重要である。赤血球数 6×10の6乗µL以上、Hb18g/dL 以上、Ht53% 以上を多血症の目安にし,ART の間隔や,血液内科への受診も考慮する必要がある。
(4)肝毒性
メチルテストステロンの経口投与は約 1/3 に肝機能障害を認めたが、ウンデカン酸テストステロンの経口投与、エナント酸テストステロンの筋肉内注射による肝機能障害はまれである。
(5)睡眠時無呼吸症候群
ART は睡眠時無呼吸を悪化させるため睡眠時無呼吸症候群患者においてアンドロゲン補充は禁忌である。
(6)その他の副作用
ざ瘡、体毛の増加、潮紅が観察されることがあるが、重要な副作用とは考えられていない

 

まとめ

西洋医学では経口投与や筋肉注射で男性ホルモンを補充することが主な治療法となります。

ホルモン剤の長期投与による副作用もありますので、市販薬などでの男性ホルモン製剤の服用は慎重にご使用ください。予防的に男性ホルモン剤を長期服用すると体内でのホルモンの産生能力の低下や前立腺の肥大へ影響などの危険性が考えられますので医師や薬剤師にご相談の上ご自身の判断ではしないようにしてください。