最近眠りが浅くなった、疲れが抜けない、夫婦げんかが増えてきた、やる気がでない、原因となることは思いつかないけれどなんだか調子が悪い、そのような症状を不定愁訴といいます。年齢を重ねるごとに内臓の働きが低下するため不快な症状として表れます、いわゆる更年期障害です。中医学から見た更年期障害についてご説明します。

更年期障害と不定愁訴

更年期障害は性腺ホルモン分泌量の低下などにより、自律神経が乱れて原因はよくわからないけれど、気分がすっきりしない、めまいや頭痛、耳鳴りのぼせやほてりなどの不定愁訴が表れます。

主な症状に

頭部の症状:めまい、頭痛、耳鳴り、のぼせ、ホットフラッシュ

心の症状:イライラ、憂鬱感、感情の波が激しい、物忘れ

身体の症状:疲れが抜けない、食欲減退、痩せてきた

睡眠障害:寝つきが悪い、寝汗、動悸、不眠症

下半身の症状:足腰のだるさ、腰痛、頻尿、夜間尿、性欲の減退、月経不順、不正出血、閉経(絶経)

などがあります。

男女ともに更年期障害は発症する可能性があります。女性は女性ホルモンが急激に低下する閉経の前後2~3年(49歳前後)、男性は男性ホルモンが徐々に低下するため個人差がありますが50代ごろから発症しやすく、なんだか調子が悪い、気分が沈むなど時期や原因がわかりにくく気付きにくいのが特徴です。

女性の更年期症状は閉経を境に自然と症状が快復する傾向にあります。

男性の更年期症状は一般的に抑うつ症状と似ているため、うつ病と考えられる場合があり通院をしても改善が見られない方もいらっしゃいます。

更年期障害の原因と漢方治療

更年期症状は臓腑の失調により発現する症状が異なるので、臓腑の状態を見極めることが重要になります。

更年期症状と関係が深い臓腑には主に【肝】【腎】【脾】があり、気血の虚実や失調が原因となります。

肝気失調の症状めまい、頭痛、耳鳴り、イライラ、のぼせ感、感情の波がある、目の充血、月経不順ホットフラッシュ、寝つきが悪いなどには逍遥散、加味逍遙散、頂調顆粒、柴胡疏肝散など肝気の流れを整える処方が使われます。

腎陽不足の症状冷え性、下肢の冷えやだるさ、耳鳴り、頻尿、夜間尿月経不順、閉経などには八味地黄丸、牛車腎気丸、参茸補血丸や参馬補腎丸、亀鹿仙など腎陽を補う処方が使われます。

腎陰不足の症状足腰が弱い、ほてり、乾燥、耳鳴り、イライラ、寝汗、不眠、寝つきが悪い、動悸などには瀉火補腎丸、杞菊地黄丸、亀鹿仙、瓊玉膏(けいぎょくこう)など陰を補う処方が使われます。

腎精の不足物忘れ、性欲の減退勃起力の低下などには至宝三鞭丸、八味地黄丸、賢脳丹、金蛇精など腎精を補う処方が使われます。

血虚の症状動悸月経不順、閉経冷え、不眠症などには婦宝当帰膠、参茸補血丸、芎帰調血湯第一加減、酸棗仁湯など血を補う処方が使われます。

気虚の症状疲れが抜けない、食欲不振、寝汗、憂鬱感などには心脾顆粒、麦味参顆粒、衛益顆粒、健脾散エキス顆粒、健胃顆粒など気を補う処方が使われます。

湿熱の症状:肥満、悪夢、身体が重だるいなどには、温胆湯、瀉下利湿顆粒など湿熱を取り除く処方が使われます。

肝腎かなめの肝と腎

女性は月経があり、妊娠や出産をする働きがあります女性にとって必要なものは【血】であり、血を蔵し調整する【肝】が重要であると考えます。

男性は元気や生きる源である【精】を蔵する【腎】が重要であると考えます。

には腎にある先天の精と脾で作られる後天の精があり、先天の精は持って生まれたもので、後天の精は食事などにより作られるものです。

精血同源という言葉があり、血が不足すれば精が不足し、精が不足しても血が不足するといった関係にあります。

脾は気血生化の源

脾は気血生化の源であるため、脾胃が虚弱すると気血が不足します。体が弱い子供のことを「ひ弱な子」と言いますがこれは【脾弱な子】ということですね。脾胃が虚弱になると食欲が減退し食べた物が十分に消化吸収されないため肌肉が栄養されずに痩せ細ります。年を重ねて高齢になると痩せていく方がいらっしゃいますが、こういった方は脾弱になっていると考えられます。

気血の不足は肝の不調となります。

肝血の不足は「動悸、イライラ、目の疲れ、手足のしびれ、抜け毛、切れ毛、ふらつき、冷え、筋のこわばり、痙攣、足をつる」

肝気の乱れは気滞気鬱・気逆があり

気鬱:憂鬱感、ため息が多い、イライラしがち、喉の詰まり、気力がなくなる
気逆:怒りっぽい、頭痛(側頭部・脹痛)、めまい、耳鳴り、顔が赤い、目の充血、口が苦い、不眠、悪夢など

気の不足

気虚:疲れやすい、風邪を引きやすい、寝汗、食欲低下

更年期障害と養生

更年期障害の多くはストレスや肥満、過度の性生活、などの生活習慣と深く関係しています。

ストレスは肝に影響を与え肝気の乱れの原因となります。「肝は木のようにのびのびしていることを好む」ので、気分転換や運動などでストレスをため込まないように我慢をし過ぎないように気を付けましょう。香りの強い食事や酸味のある食事、ネギやバジル、パクチー、オレンジ、ゆずなどには発散する働きがあるので普段の生活に取り入れると気持ちが穏やかになります。

肥満は湿熱の原因になり重だるさなどの要因になりますので、お酒は控えて肥甘厚味を避け、薄味であっさりしたものを取るようにし、適度な運動を心掛けましょう。

適度な性行為は男女間の心の安定につながるのですが、過度の性生活は腎精の消耗の原因になるのでほどほどにしましょう。

食事の量が減ってきたり、食欲が減退して痩せてきた際には脾気虚の兆候と考えられるので、肉類など偏った食生活を見直し根菜類や大豆製品、男性は玉ねぎを取り入れた食事などに気を付け、適度な運動を取り入れることで食欲の回復を心掛けましょう。

筋肉量の低下は脾胃の機能低下の表れとも考えられますので、適度な運動をすることで食欲が増進し、筋肉量の増加にもつながります。男性更年期症状の一つに筋肉量の低下が見られることがあります。男性ホルモンの分泌が十分でない場合にも筋肉がつきにくくなりますので、金蛇精などの男性ホルモン製剤を併用することで症状の改善を早めることが期待できます。

病院に行ったけれど、なかなか改善しない更年期症状でお悩みの際は、あけぼの漢方にご相談ください。

 

~おまけ~

老化と臓腑の関係

『素問・上古天真論』によると

女性は、六七(42歳)にして三陽脉は上に衰え、面は皆やつれ、髪始めて白む
内臓がさらに衰え、顔がやつれ、髪に白髪が出始める】※三陽脉‐陽脈は臓腑の腑を表しており、口から肛門までの管上に存在する内臓を指す。

男性は、七八(56歳)にして、肝気衰え、筋動かす能わず、天癸渇れ、精は少れ、腎の蔵衰えて、形体皆極まる
肝気が衰え、手足が動かしにくくなり、運動機能が低下する、男性ホルモンが減少し、生殖能力が衰える

とあります。

天癸(てんき)】とは現代の考え方でいうところの性腺ホルモンとよく似た性質を持っています。成長と発育、生殖、老化などを主っていると考えられています。

天癸が不足すると女性は月経不順、排卵障害、不妊、不育などが表れます。男性は性機能の低下により男性器の勃起不全や射精障害などとなります。

天癸の不足には腎気や腎精不足、先天性の不足、脾気の虚弱、肝気鬱滞、血虚などが考えられます。

『素問・上古天真論』によると、生長壮老は、女性は7の倍数、男性は8の倍数でカラダに変化が表れると考えられています

女性の体の変化

女子七歳にして、腎気盛んになり、歯は生え更わり、髪は長くなり

二七(14歳)にして天癸至り任脈通じ、月事時を以って下る。故に子有り。
【性徴が表れ、丸みを帯びた体形になり、初潮を迎えると妊娠出産ができるようになる】※任脈‐妊娠を主る経脈

三七(21歳)にして、腎気平均、故に真歯生え長じ極まる。
【腎気が落ち着き、歯や骨の成長が止まる】

四七(28歳)にして筋骨堅く、髪長じ極まり、身体盛壮たり。
【筋肉や骨はしっかりとして、髪の毛はよく伸び、肉体的に最も活発である、体がしっかりして女性としてのピークを迎える

五七(35歳)にして、陰陽脉衰え、面(顔面)やつれはじめ、髪は落ち始める。
【内臓が衰え始めて、顔がやつれ、抜け毛や切れ毛が増える】

六七(42歳)にして三陽脉は上に衰え、面は皆やつれ、髪始めて白む
内臓がさらに衰え、顔がやつれ、髪に白髪が出始める】※三陽脉‐陽脈は臓腑の腑を表しており、口から肛門までの管上に存在する内臓を指す。

七七(49歳)にして、任脈虚し、太衝脉は衰少、天癸渇れ、地道通らず、故に形壊れて子無し。
妊娠力が低下し、女性ホルモンが減少し、閉経を迎え、妊娠・出産が出来なくなる

 

男性の体の変化

丈夫(男)八歳にして、腎気実し、髪長じ、歯が生え更わる

二八(16歳)にして、腎気盛ん、天癸至る、精気溢れ瀉れ、陰陽和す故に子有
【性徴が見られ始めしっかりとした体格になり、精通を迎えるので、子供を作ることができる】

三八(24歳)にして、腎気平均、筋骨は勁強、故に真歯生え長じ止まる
【腎気が落ち着き、歯や骨の成長が止まる】

四八(32歳)にして、筋骨隆盛、肌肉満壮
【体力的に充実して、男性のピークを迎える】

五八(40歳)にして、腎気衰え、髪は堕ち、歯は槁れる
【腎気が衰え始め、髪が減少し、歯が弱くなる】

六八(48歳)にして、陽気は上に衰渇し、面やつれ、髪髭は白をわかつ
さらに腎陽が減少し、男性の性機能や性欲が減退しはじめ、顔はやつれ、髪や髭に白髪が混じる

七八(56歳)にして、肝気衰え、筋動かす能わず、天癸渇れ、精は少れ、腎の蔵衰えて、形体皆極まる
肝気が衰え、手足が動かしにくくなり、運動機能が低下する、男性ホルモンが減少し、生殖能力が衰える

八八(64歳)にして、則ち歯髪去る
【歯や髪の毛が抜け落ちる】